更新:2021年1月25日
行政書士 佐久間毅
1 配偶者ビザ申請のために、フィリピン人と日本人が結婚したのちに取得する結婚証明書
配偶者ビザ申請では、日本とフィリピンの両方の国で結婚が完了していることを「証明」することが必要です。
その証明方法は、通常は、結婚証明書となります。
どちらかの国でしか結婚が成立していないことを「跛行婚(はこうこん)」といい、一方の国ではまだ独身なので、配偶者ビザ申請のハードルが上がります。
「偽装婚」では、日本では結婚してもお相手の国では独身のままにしておきたいニーズが高くお相手の国で結婚を登録しないことが多いので、それとの区別が困難だからです。
フィリピンの場合は、どちらの国の結婚手続きを先行させても日本とフィリピンの両国で結婚を登録できますので、配偶者ビザ申請のときには両国の結婚証明書を提出することが求められます。
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〇フィリピン先行で結婚をして、その後日本に報告をした方のケース
フィリピン政府で成立した結婚を日本に届け出るさいは、在フィリピン日本国大使館でも日本の市区町村役場で行なうこともできますが、前者の場合は時間がかかりますのでご注意ください。
市区町村役場へ結婚を報告される場合は、市区町村役場への提出用と、日本の出入国在留管理局への提出用で、2通のアポスティーユ付き結婚証明書を用意しましょう。
・日本の結婚証明書⇒戸籍謄本
・フィリピンの結婚証明書⇒結婚公証書(Certificate of Marriage) ※PSOというフィリピンの組織から交付されたもので、フィリピン外務省(DFA)の認証済みのもの。
〇日本先行で結婚をして、その後フィリピンに報告をした方のケース
このケースでは、多くの方が在日フィリピン大使館に結婚を報告されます。在日フィリピン大使館はその後に、本国のPSAへ報告し登録されますが、この登録が完了するまでに在日フィリピン大使館は3カ月かかるとアナウンスしています。
フィリピン政府(PSA)が発行した結婚証明書はそのままでは日本で使用できませんので、フィリピン外務省で認証を受けます。
・日本の結婚証明書⇒戸籍謄本
・フィリピンの結婚証明書⇒結婚証明書(Report of Marriage)※アポスティーユ付き
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2 配偶者ビザの要件(条件)を把握し、的確に証明しよう!
配偶者ビザの要件は、大きくわけて2つあります。把握するだけではダメで、それを証拠で立証する必要があります。
配偶者ビザの要件をみたしていることは、申請人が「証明」しなければ不許可になるので、まずは配偶者ビザの要件は許可される条件が何なのかを的確に押さえる必要があります。
条件がわからないのに、それを立証することは不可能だからです。
なお、在留資格変更許可申請で配偶者ビザを取得する場合は、「素行の善良性(これまで日本の法律を守って日本で暮らしていたか)」も条件に加わります。
フィリピン人のみに特有の条件はありませんが、率直にいって残念ながら偽装婚も多い国なので、実態のある結婚であることの立証は慎重におこないましょう。
2.1 実態のある婚姻であることの立証
偽装婚ではなく真実の結婚であることを証拠でもって立証します。
対面での交際期間が短い、年齢差が大きい、言語能力が乏しく意思疎通がスムースでない、などの要素があると、立証のハードルが上がります。
2.2 収入の継続性・安定性・額の立証
収入は継続性と安定性と額を立証していきます。
就職したばかり、非正規雇用、給料が少ない場合は、立証のハードルが上がります。
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3 配偶者ビザを新規に取得するときの申請方法を確認しよう!
フィリピン人のお相手がいまフィリピンにいるのか日本にいるのかで、配偶者ビザの申請方法が変わってきます。
一般的にフィリピンからはじめてお相手を呼び寄せるときのほうが、日本にいるフィリピン人が配偶者ビザに変更する方が大変だと思われがちですが、
上述のように、在留資格変更の場合は審査項目が1つ増える(素行の善良性)ので、海外から呼び寄せるときよりも難度は上がります。
いくら配偶者ビザの2つの要件の立証に成功しても、例えば留学生のオーバーワーク(アルバイトのやり過ぎ=資格外活動罪)が発覚したりすると、配偶者ビザは許可されないことが多いです。
過去の滞在で不法行為をおこなっているからです。
3.1 フィリピンからお相手を配偶者ビザで呼び寄せよう!
〇在留資格認定証明書を申請しよう
フィリピンから配偶者を日本に呼び寄せる場合は、在留資格認定証明書交付申請という申請を、日本の出入国在留管理局にたいして行ないます。
許可されると「在留資格認定証明書」という書面が交付されます。
不許可になった場合は、理由を入管で聞き出したうえで、不許可理由を解消し、再申請できます。
しかし不許可通知は「法務大臣」の名前で発行されますので、のちに大臣の判断を再申請によってひっくり返すことは大変です。1回目の申請から絶対に手を抜かないでください。
【申請人】申請人はあくまでもフィリピン人のお相手本人です。しかしながらご本人がフィリピンにいらっしゃる場合は、日本人配偶者が入管に代理人として提出します。
ただし申請書面のほとんどは日本人配偶者が作成し、署名し、準備するので、ご本人よりも日本人配偶者のがんばりが結果を左右します。
【申請先】出入国在留管理局 ※東京、名古屋、大阪などにある本局のほか、各都道府県に支局や出張所があります。
【審査期間】出入国在留管理局は、標準処理期間を1か月から3カ月としています。
【許可時に交付されるもの】在留資格認定証明書
【入管に支払う審査料】なし(無料)
〇在留資格認定証明書が交付されたそのあとは?
Step1 在留資格認定証明書をフィリピンに郵送する
在留資格認定証明書は紛失すると再発行がきかないので、EMSなど確実な方法で送りましょう。
Step2 在フィリピン日本国大使館・領事館で査証(VISA)を申請する
査証とは、在外公館が発給する日本入国についての推薦状です。この推薦状がないと、日本の空港・海港における入国審査をパスできません。
【申請人】フィリピン人である配偶者
【申請先】日本の在外公館 ※フィリピン人の居住地により大使館・領事館の管轄が異なりますのでご注意
・在フィリピン日本国大使館の管轄地域
ルソン地方(北イロコス州,南イロコス州,アブラ州,マウンテン州,ラ・ウニョン州,ベンゲット州,バンガシナン州,バタネス州,アバヤオ州,カガヤン州,イサベラ州,イフガオ州,ヌエヴァ・ヴィスカヤ州,キリノ州,サンバレス州,タルラック州,ヌエヴァ・エジハ州,パンパンガ州,バターン州,ブラカン州,アウロラ州,リサール州,カヴィテ州,ラグナ州,バタンガス州,ケソン州,オクシデンタル・ミンドロ州,オリエンタル・ミンドロ州,マリンドゥク州,ロンブロン州,パラワン州,北カマリネス州,南カマリネス州,カタンドゥアネス州,アルバイ州,ソルソゴン州,マスバテ州,カリンガ州
・在ダバオ日本国総領事館の管轄地域
ミンダナオ地方(北サンボアンガ州,南サンボアンガ州、サンボアンガ・シブガイ州、ブキドノン州、カミギン州、北ラナオ州、西ミサミス州、東ミサミス州、コンポステラ・バレー州、北ダバオ州、南ダバオ州、東ダバオ州、西ダバオ州、コタバト州、サランガニ州、南コタバト州、スルタン・クダラット州、北アグサン州、南アグサン州、ディナガット・アイランズ州、北スリガオ州、南スリガオ州、南ラナオ州、マギンダナオ州、バシラン州、スールー州、タウィタウィ州)
・在セブ日本国総領事館の管轄地域
ビサヤ地方(アンティーケ州,アクラン州,カピス州,イロイロ州,ネグロス・オクシデンタル州,ネグロス・オリエンタル州,セブ州,ボホール州,シキホル州,北サマレ州,サマル州,東サマル州,レイテ州,南レイテ州,ギマラス州,ビリラン州)
〇参照:日本の在外公館ホームページ
3.2 フィリピンから日本に夫婦同時に帰国しよう!
日本人とフィリピン人のご夫婦ともに、フィリピンで暮らしていらっしゃる場合(たとえば、フィリピンに海外赴任した日本人が、フィリピンでご結婚されたケースなど)、
小さなお子様がいらっしゃるときなどは特に同時帰国を希望されますが、その際のポイントは収入の継続性の立証になってくることが多いです。
海外赴任の場合には出向元の日本企業に戻るだけなので収入の継続性の立証は容易ですが、現地企業に勤務されていたときは立証のハードルが上がります。
現地採用組の方が、海外赴任組と同じような意識で配偶者ビザをご自身で申請されて不許可になり、
東京のアルファサポート行政書士事務所に持ち込まれるケースが散見されますのでご注意ください。
同時帰国を希望される日本人とフィリピン人のご夫婦の場合、おふたりの間にお子様がいらっしゃることも多く、このような場合は婚姻の真実性の立証のハードルはさがります。収入の立証に注力しましょう。
3.3 中長期ビザから配偶者ビザへ変更しよう!
中長期ビザとは、留学ビザや就労ビザなどを指します。これに該当されるフィリピン人は在留カードをお持ちですので確認してみましょう。
ただし在留カードをお持ちのかたでも、難民申請中で特定活動ビザをお持ちの方や、技能実習ビザ、特定技能ビザをお持ちの方など在留資格に特有の考慮事項がありますので、ビザを専門とする行政書士に相談しましょう。
在留資格変更許可申請が許可されると、出入国在留管理局から新しい在留カードが交付されます。在留カードの交付が許可の事実を表します。
【申請人】フィリピン人ご本人
【申請先】出入国在留管理局
【審査期間】出入国在留管理局は、標準処理期間を1か月から3カ月としています。
【許可時にもらうもの】新しい在留カード
【入管に支払う審査料】4000円 ※許可されたときに、手数料納付書に印紙を貼付して納めます。
3.4 短期ビザから配偶者ビザへ変更しよう!
フィリピン人のお相手が短期ビザをお持ちの場合で、90日の在留期間である場合には、配偶者ビザへの変更を申請できる可能性があります。
ただし短期ビザから配偶者ビザへの変更は希望者はとても多いのですが、入管法という法律が明文で原則禁止としている方法なので、ハードルは高いです。
入管法が条文で要求する「やむを得ない特別の事情」の立証に成功しなければ不許可になります。
ビザ専門の行政書士に相談しましょう。
4 フィリピン人が配偶者ビザ申請をするときに必要な書類を集めよう!
海外から呼び寄せるときは在留資格認定証明交付申請書を、他のビザから配偶者ビザへ変更するときは在留資格変更許可申請書を準備します。
それ以外のデフォルトの書類は共通ですが、変更の場合には、「素行の善良性」が要件として追加されていることに留意してください(上述)。
当然、素行の善良性に不安があるのであれば、なんらかの手立てを講じなければ許可はおぼつきません。
4.1 みんなに共通の書類
出入国在留管理局が配偶者ビザ申請の際に要求しているデフォルトの書類です。これらがそろっていないと申請が受付されません。
・フィリピン人の結婚証明書 ※アポスティーユ付き
・フィリピンの結婚証明書の日本語訳
・日本人の戸籍謄本
・日本人の住民票
・日本人の課税証明書
・日本人の納税証明書
・在留資格認定証明書交付申請書
・在留資格変更許可申請書
・質問書
・身元保証書
4.2 あなたの弱点をカバーする書類
ひと口に「日本人と結婚したフィリピン人による配偶者ビザ申請」といっても、結婚に至った経緯や年齢差、職業・収入などは夫婦ごとに異なり1つとして同じ申請はありません。
みんなと同じ書類を提出しても許可されるような高収入で成人したお子さんがいらっしゃるようなケースを除いては、ご夫婦それぞれが抱える弱点をサポートする書面を用いて、
配偶者ビザの要件を満たしていることを立証していかなけければ許可はおぼつきません。補強書面の選定は慎重に行ないましょう。
(例)
・フィリピン人の日本での在職証明書 ※就労ビザからの在留資格変更のケースなど
・フィリピン人の卒業証明書 ※留学ビザからの在留資格変更のケースなど
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行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。