配偶者ビザ更新の難易度3パターン

更新日時:2020年6月21日

行政書士 佐久間毅

配偶者ビザの更新

■かんたん解説

配偶者ビザの更新は、多くの方は新規取得のときよりもラクに済むはずです。「ラク」とは「手を抜いて良い」という意味ではなく、あくまでも「作業量が少ない」という意味です。また、前回申請と状況が変化しているなど一部の方は、新規取得と同等の慎重さが求められます。さらに、状況が悪化しているかたは、更新申請が許可されないこともあります

■くわしく解説

配偶者ビザの在留期間は、1年、3年、5年、6か月がありますが、以下の記事では1年前にはじめて配偶者ビザが新規に許可され、現在「1年」の配偶者ビザをお持ちのかたを念頭に解説します。現在、1年以外の在留期間(たとえば6か月など)が許可されているかたには該当しない部分があります。

 

1.新規申請よりも【作業量が少ない】配偶者ビザの更新申請

配偶者ビザの更新

前回の新規申請時に明らかにした就職先や給与の額が今次申請においても維持されていて、夫婦仲良く同居して暮らしている場合には、新規申請よりも更新申請のほうがカンタンになります。ただしこの「カンタン」というのは「手を抜いて良い」という意味ではなく、「物理的な作業量が少なくて済む」という意味です。

更新申請は、新規申請と異なり「質問書」を提出する必要がありませんし、「結婚にに至った経緯」をまとめる必要もありません。立証しなければならないのは、前回の許可から今回の申請までのあいだ、配偶者ビザの要件を満たしていたことと、今後も引き続き満たしつづける見込みであることです。

 


■更新申請の注意点とポイント【1】「素行の善良性」が大前提

配偶者ビザに限らず、在留資格の変更申請と更新申請が許可されるためには、法律用語でいうところの「狭義の相当性」が必要です。狭義の相当性とはわかりやすくいうと「素行の善良性」(日本の法律に違反せずに生活している)と考えていただければよいです。前回に許可されてから今回の申請までの1年間で、日本の法律に違反したり犯罪を犯したりした場合は、たとえ夫婦仲が良く、経済状況がよくても、更新が許可されない可能性があります。「素行が善良」でないからです。

たとえば、留学ビザで滞在中の留学生がいくら成績優秀で学費の支払いをきちんとしていたとしても、法定時間を超過するアルバイトをしていると資格外活動罪という犯罪であるため、留学ビザの更新が許可されず、学業半ばで母国へ帰国することとなります。

配偶者ビザも同様で、配偶者ビザの要件(資格該当性)を満たしていても、日本の法律を守っていない方は、更新が許可されない可能性があり、更新申請の難度があがります。

 

■更新申請の注意点とポイント【2】前回の申請がギリギリで許可された自覚のある方は要注意

前回の申請と状況が変わっていないのであれば、そのことを立証することにより、更新申請は許可される可能性が高いです。しかしながら、前回の申請が要件をすれすれでクリアしただけであったのであれば、今回の更新申請では、むしろそのことを挽回するくらいの丁寧な申請が必要なことは言うまでもありません。前回申請がギリギリで許可されたかたが今回も前回と同じ内容で申請をするのであれば、今回もギリギリということであり、下手をすれば不許可となります。

 

■更新申請の注意点とポイント【3】前回の申請が虚偽申請でないこと

配偶者ビザの更新申請は、更新申請のさいに提出した書類だけを審査するのではなく、前回の申請が虚偽でなかったかどうかも審査されます。例えば、世帯の収入を確保しないと配偶者ビザが許可されないので、(本当は働き続けるつもりがないのに)形だけ就職して許可を得たが、許可された直後に退職した場合などは、前回の申請で申告した収入と、今回の申請で提出する公的書面上の「所得」のつじつまがあわなくなります。

 

2.新規申請と【同等の慎重さ】が必要な更新申請

配偶者ビザの更新

前回申請と状況が変わっていないのであれば、状況が変わっていないことを立証することによって更新が許可される可能性が高いことはお分かりいただけると思います。しかしながら、前回申請と今回の申請(今次申請)とで、配偶者ビザの要件に関係する部分に変更が生じているのであれば、話は別です。

前回申請では長年勤めた会社で申請したが、この1年のうちに転職したとか、同じ会社につとめてはいるが大幅に減給になったなどという場合がこれにあたります。

このように、前回申請と状況が異なった申請をする際は、丁寧な申請が必要となります。


3.新規申請よりも【難しい】更新申請

3.1 夫婦仲が悪化したケースにおける更新申請

配偶者ビザの更新

配偶者ビザの審査の核心のひとつは、その外国人のかたが「配偶者としての活動」をしているかどうかです。これは、夫婦が仲良く同居して暮らしていることを立証することによりクリアできます。夫婦仲が悪くなり「配偶者としての活動」をしていないと認められると、更新申請は不許可になります。

すでに別居しているにもかかわらず、その届をしていないため住民票上は同居している外形になっているときにその住民票を用いて更新申請をすると、それが発覚した時点で罪に問われる可能性があります。


3.2 夫婦仲はよいが別居しているケースにおける更新申請

配偶者ビザの更新

日本人同士の結婚では、お仕事の都合などで「単身赴任」をすることがありますが、配偶者ビザをお持ちの外国人の方には原則として認められません。実は日本の民法には夫婦の同居義務(民法752条)が定められており、別居した夫婦は民法違反であることのみならず、夫婦が別居しているのであれば、その外国人のかたが日本に住む理由がない(母国で仕事をすればよいではないか)と判断されてしまうからです。それだけでなく、同居していることは夫婦仲が良いことの分かりやすい表現であるため、偽装婚をみわける重要なファクターとなっていることも一因です。

 


3.3 離婚した後に別の日本人と再婚したケース(いわゆるパートナーチェンジ)における更新申請

配偶者ビザの更新

外国人のかたが日本人Aさんと結婚して配偶者ビザを取得したのちに離婚し、別の日本人Bさんと結婚をした場合、次の在留資格の申請は「新規」や「変更」ではなく「更新」となります。しかしながらこの更新は、非常に困難なものとなります。なぜなら、短期間のあいだに日本人Aさんと離婚をしているので前回の申請内容が真実のものであったのか疑いをもたれるだけでなく、今回のBさんとの結婚もどこまで真剣なものなのかと疑われるからです。それだけでなく、Aさんと正式に離婚する前からBさんとお付き合いしているのであれば不倫ですし、Bさんとお付き合いをしている期間の在留資格が(Bさんではなく)Aさんとの結婚を根拠に取得したものであることも不利な材料となります。


3.4  法律違反や犯罪を犯したケースにおける更新申請

日本人との結婚を契機に海外から来日したかたの場合、日本に家族や友人もなく寂しさやストレスから万引きなどの犯罪に走ってしまうことがあります。また、配偶者ビザの外国人の方は留学生や就労ビザの外国人の方と違って、学業や就労などの義務があるわけではないため日中ヒマなことも多く、SNSなどで知り合った悪い同郷の友人とつるんで様々な違法行為をしてしまうことがあります。さらに気が強いかたなどは警察官の職務質問中に警察官を殴ってしまうなどトラブルになり、公務執行妨害罪で逮捕・起訴されてしまうこともあります。

このようなケースでは、いくら夫婦仲が良く経済状況も良好で配偶者ビザの要件を満たしていたとしても、さらにはご夫婦のあいだにお子さんがいらっしゃったとしても、在留期間更新が許可されない可能性があります。冒頭にご説明したように、「素行の善良性」に問題があるからです。

 

■この記事を書いた人

行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)

東京都出身。慶應義塾志木高等学校慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。