配偶者ビザ申請の必要書類「課税証明書(非課税証明書)」の解説と取得のしかた

更新日時:2021年2月24日

行政書士 佐久間毅

非課税証明書_配偶者ビザ

配偶者ビザの申請では、収入の継続性・安定性・額3要件の立証が不可欠ですが、課税証明書はこれら収入の3要件の一部を公的に証明する手段となります。官公庁が発行する公文書ですので、記載事項には非常に信頼がおかれています。

 

それだけに、課税証明書に不利益な事実が記載されてしまっていたり、または取得できないようなときには、うまくカバーしていかないと苦戦を強いられ、不許可理由になることもあります。

 

■かんたん解説

>>  配偶者ビザ申請では、収入の継続性・安定性が重要な審査項目となります。

   収入の額を証明するもっとも基本的な書面が課税証明書で、収入の継続性と安定性は別途証明します。

   >>配偶者ビザ 条件

 

>>  結婚したのに配偶者控除がなされていなかったり、扶養人数が多かったりと、課税証明書では、所得以外の記載事項からも疑義が生じることがあるので注意します。

 

>>  非課税証明書の方は、課税されるだけの所得がないことを意味しますので、基本的には不許可の方向で審査されます。

 

>>  住民税の課税証明書は、あなたの所得を証明してくれる公的な書面(公文書)で、もっとも信ぴょう性があります。

>>  住民税の課税証明書は、市区町村役場で取得できます。

>>  住民税は「前年の」所得を基準に課税されるので、令和2年度の課税証明書には、令和元年の所得が記載されます。

>>  給与所得者は、前年(令和元年)の所得に基づいて計算された住民税が、その年(令和2年)の6月から翌年(令和3年)の5月までの給与から特別徴収されます。

 

>>  課税証明書を取得できる人でも収入不足をを指摘されて不許可になる方はかなりいらっしゃいますので、非課税証明書のかたは細心の注意を払います。特に、非正規雇用などで「収入の安定性」にも疑義が生じる方は要注意です。

 

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 ・配偶者ビザ 収入の継続性・安定性・額について

■配偶者ビザと「課税証明書」にかんする1つの事例

配偶者ビザと課税証明書

 

【申請人プロフィール】

 

Tさん(日本人女性)

Kさん(外国人男性)

20代女性

結婚1年未満

子供なし

派遣社員

 

Tさんは短期大学を卒業後、アルバイトや派遣社員などをしながら実家でご両親と暮らし、貯金ができたら海外旅行を楽しむといった生活をされてきました。

 

Kさんは日本に住む留学生でインターネットを介して知り合いましたが、Kさんの母国を旅行したことがあるTさんとはすぐに仲良くなったといいます。

Kさんは勉学をしながら留学生仲間と弁当をつくる工場でアルバイトをしており、特に金銭的に困っている様子もなく、豊かとはいえないまでも、2人がそれぞれ仕事をしていけば、もし将来結婚しても生活に困ることはないと考えていました。

そしてKさんの卒業を目前にして、同棲していたふたりはめでたく結婚されました。

 

ところが、留学生は法律上、卒業してしまうと以後は一切アルバイトをすることができなくなり、アルバイトをすると不法就労になってしまうとのことで、Kさんは結婚してほどなくアルバイトを辞めざるを得ませんでした。

 

Tさんは言います。2人のお給料を足し合わせれば、日々の生活に困ることはまったくありませんでしたが、私だけの収入で暮らすとなるとかなり厳しいものがありました。

 

ただ、配偶者ビザ就労ビザをもらわなければKが日本で働く道はないのですから、私の収入を世帯の収入として配偶者ビザを申請しました。

出入国在留管理局に提出した「課税証明書」の所得の欄には額面ではなく私の「手取り」の年収が書かれていましたので、内心危ないなとは思っていました。

それでも、配偶者ビザをもらえればその後はKもアルバイトやフルタイムの仕事をできるわけですから許可されることに一縷の望みをもっていましたが、残念ながら3か月後に不許可通知を受け取りました。

 

そこでKのビザが切れてしまったので、今は母国に帰りました。配偶者ビザ申請の時に、もっとできることがあったと悔やむ気持ちもありますが、後悔先に立たずなので、前を向いています。

 

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■くわしく解説

住民税の課税証明書とは、あなたが支払わなければならない住民税の額を証明してくれる書類です。

この書面には、課税額の算出根拠として「前年の所得」や「扶養控除」などが記載されるため、所得の証明書として使われます。

 

配偶者ビザの審査において、収入は最も大切なものの1つですが、「収入の継続性と安定性」と、「」の両方が審査されます。

収入の額が申請時点において瞬間的にあっても意味はないので、収入の継続性と安定性をいかに立証するかが最大のポイントです。

収入の継続性については、配偶者ビザ申請の提出書類「質問書」に記載することになる就職年月日や正社員・派遣の別などいくつかの項目から判断されます。

 

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配偶者ビザの条件

 

 

家を借りるさいの賃貸契約などでは、所得証明書として「源泉徴収票」を利用することもありますが、「源泉徴収票」は会社が発行する私文書であり、また、源泉徴収票には会社が押印する義務がなく、押印されていない源泉徴収票がほとんどなので、役所が発行する公文書である「課税証明書」と比較すると格段に証明力が弱くなります。実際、在タイ日本大使館は、公的書面が提出できない場合は仕方がないので、公証役場の認証のある源泉徴収票を提出するように指示しています。

 

出入国在留管理局は、所得を証明する手段として、また扶養控除の状況を確認するため、「課税証明書」の提出を求めています。

※扶養控除の記載のない「課税証明」を提出すると、扶養控除の記載のある「全項目証明」を取得するよう指示されることがあり、

このことから出入国在留管理局は「課税証明書」によって単に所得額のみを調査しているのではなく、「扶養人数」等を確認していることがわかります。

※扶養人数が多ければ、それだけ配偶者ビザ申請の審査にあたり多くの所得が必要となります。また、外国に住む外国人配偶者も扶養控除の対象なので、結婚しお相手にみるべき収入がないのに、国内在住・国外在住を問わずいつまでも扶養控除の対象にしていないと、その意図が疑われます。つまり偽装婚なので扶養する気がないので扶養の対象から外しているのではないか?という懸念です。

 

***

 

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Ⅰ 住民税の納税義務者

市区町村に住所をおいている人は、原則として住民税が課されます。住民税には「均等割」部分と「所得割」部分とで構成されています。

  住民税額=均等割額+所得割額

 

Ⅱ 住民税が非課税となる人

非課税証明書_配偶者ビザ

例外的に、住民税の所得割額・均等割額ともに非課税となる方は次のとおりです。

下記は東京23区内の場合です。条例で定めるので自治体ごとに計算式は異なります(地方に行くほど基準額が下がるため非課税になりやすくなる傾向にあります)。

 

生活保護法による生活扶助を受けている方

障害者・未成年者・寡婦又は寡夫で、前年中の合計所得金額が125万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4千円未満)の方

前年中の合計所得金額が市区町村の条例で定める額以下の方

 ・同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合

   35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+21万円

 

課税されていない方は、「非課税証明書」を取得します。なお、自治体によっては「非課税証明書」という名前の書面がなく、

「課税証明書」の内容として非課税の旨が記載されていることもあります。この場合は、非課税の方も「課税証明書」を取得します。

 

Ⅲ 課税証明書の入手先

市区町村役場_配偶者ビザ

お住いの市区町村役場で取得できます。ただし転居された場合は、前住所地で取得しなければならない場合があります。

 

令和2年度の「課税証明書」は、令和2年1月1日に住民登録していた市区町村役場で、令和2年5月以降に発行されます

発行開始時期は自治体により少々ずれがありますが、東京都新宿区の場合は、次の通りです。

 

 〇住民税が全額お勤め先の給与から特別徴収されている方

        令和2年5月12日から令和2年度の課税証明書発行。

 〇上記以外の方(普通徴収、年金からの特別徴収、給与からの特別徴収と他の徴収方法を併用)

        令和2年6月10日から令和2年度の課税証明書発行。

 

令和2年は令和2年1月1日から12月31日まで、令和2年度は(通常)令和2年4月1日から令和3年3月31日までですが、

令和2年度の課税証明書は、令和元年の所得を基準として、令和2年6月から令和3年5月にかけて徴収される分を記載する書面で、

令和2年5月以降に発行が開始されるというわかりにくい構造になっています。

 

出入国在留管理局では、配偶者ビザ申請の必要書類として、直近年度の「課税証明書」を求めています。

東京都新宿区の場合、会社員で給与以外の所得がない方は、令和2年5月11日までは、直近年度は「令和元年度(平成31年度)」となります。

このように、次年度の課税証明書の交付が開始される直前に課税証明書を取得した場合は、配偶者ビザを申請する日にはもはや「直近年度」でなくなっている可能性がありますからご注意ください。

 

Ⅳ 実はネーミングがさまざまの「課税証明書」

全国共通で「課税証明書」とネーミングされていれば話が早く混乱が少ないのですが、たとえば千葉県のある市では「課税証明書」という名前の証明書を発行していません。この市の場合は、「所得証明書」が「課税証明書」の役割を果たしています。

 

また他の市区町村では、「課税証明書」のほかに「課税所得証明書」という書面を発行しており、前者が課税額のみの証明書であり、後者が全項目証明であるような市区町村もあります。

さらに別の市区町村役場では、課税額と課税標準額が記載されている「課標証明書」という紛らわしい(?)書面を発行する市区町村もあります。

したがって、「課税証明書」を取得する際には、取得の際に市区町村役場の受付のかたに確認してから取得します。

 

Ⅴ 非課税証明書の入手方法

時折、所得がないので「非課税証明書」を取得することできないとおっしゃる方がいらっしゃいますが、ひと手間かけることで取得することは可能です。

配偶者ビザ申請では「課税証明書」と「納税証明書」の両方を提出する必要があり、圧倒的大多数の方はこれらを提出しますので、「非課税証明書」すら提出しないとさらに心証が悪くなりますから、面倒ではあっても「非課税証明書」は入手してください。

 

所得がゼロのかたが、非課税証明書を市区町村役場に申請した場合、その場で発行してくれる市区町村役場と、そうでない市区町村役場があります。

 

市区町村によっては、まず所得がゼロ円であることを申告してからでないと、非課税証明書を発行してくれないところがあります。発行される非課税証明書には申告のとおり「所得0円」と記載されます。

申告から非課税証明書が発行されるまでに数週間かかるとされていますから、早めに申告を済ませましょう。

 

申告を求められることなくその場で「非課税証明書」を発行してくれる市区町村役場でも、発行される「非課税証明書」の記載内容はまちまちです。「所得0円」との記載がある非課税証明書もあれば、所得の記載は一切なく、単に「非課税」とのみ記載される「非課税証明書」もありますが、どちらでも構いません。

 

Ⅴ 「課税・非課税・納税証明交付申請書」の書き方

Ⅴ-1 「課税・非課税・納税証明交付申請書」のサンプル

「課税・非課税・納税証明交付申請書」のフォーマットは、自治体ごとに異なります。ここでは、東京都板橋区の「課税・非課税・納税証明交付申請書」をもちいてご説明します。

課税・非課税・納税証明交付申請書
課税・非課税・納税証明交付申請書

Ⅴ-2 「課税・非課税・納税証明交付申請書」の書き方:申請者

窓口に「課税・非課税・納税証明交付申請書」を提出するかたのことです。本人確認書面の提示が必要です。

申請者の現住所、氏名、電話番号を記載します。

 

Ⅴ-3 「課税・非課税・納税証明交付申請書」の書き方:だれの証明が必要か?

①証明が必要な方(通常は、日本人である配偶者)の1月1日の住所を記載します。

②証明が必要な方(通常は、日本人である配偶者)の現在の住所を記載します。

③証明が必要な方(通常は、日本人である配偶者)の電話番号を記載します。

③証明が必要な方(通常は、日本人である配偶者)の氏名・生年月日・申請者との関係を記載します。

 

Ⅴ-4 「課税・非課税・納税証明交付申請書」の書き方:必要年度・内容・枚数を記載します。

令和2年度の課税証明書を取得すると、「前年中の所得」が記載されます。つまり、令和元年の所得です。

東京都板橋区は、「課税証明書」「非課税証明書」「納税証明書」とわかりやすいネーミングなので、請求しやすいですね。

 

配偶者ビザ申請に必要なのは、直近年度の「課税証明書」1枚です。

令和2年度は4月1日から始まりますが、令和2年度の課税証明書が発行されるのは5月以降(自治体による。)です。

 

Ⅵ 海外にいる配偶者や親族の扶養控除

国外にいる配偶者や親族の扶養控除をご希望の方は、国税庁のこちらの案内をご参考にされてください。

 

ダウンロード
国税庁:国外居住親族に係る扶養控除等の適用について
令和2年度の税制改正大綱により一部の見直しが示されています。本PDFはご参考にとどめ、常に最新の情報をアップデートしてください。
国外居住配偶者の扶養控除.pdf
PDFファイル 439.4 KB

Ⅶ まとめ

入管は、1つだけのマイナス要因は説明を尽くすことにより大目に見てくれることもないわけではありませんが、2つ以上のマイナス要因を同時にかかえていると、問答無用で不許可にすることが多いので注意しましょう。入管の立場になると、マイナス要因をいくつも抱えている人は、不許可の判断を下しやすいということになります。

 

したがって、配偶者ビザのマイナス要因を自覚している人は、重箱の隅をつつかれても耐えられる書面を作成していく必要がありますから、みんビザがお勧めする行政書士に相談しましょう。

 

アメリカや欧州の方には移民法弁護士(immigration lawyer)といって、ビザの取得を弁護士に依頼することはごく当たり前の行為として定着しているのですが、アジア諸国などではまだ自力で徒手空拳でビザ申請をやりがちですから、日本人の方がきちんとフォローしてあげましょう。日本ではビザ申請は弁護士ではなく行政書士の仕事となっています。>>こちら

 

 

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■この記事を書いた人

行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)

東京都出身。慶應義塾志木高等学校慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。


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