更新日時:2020年12月7日
行政書士 佐久間毅
配偶者ビザ申請を日本有数のレベルでお手伝いしている東京・六本木のアルファサポート行政書士事務所には、残高証明は100万円あれば十分など、インターネット上や知人からの根拠不明な情報をうのみにしてしまい、ご自分で申請をされて残念ながら不許可になってしまった案件が数多く持ち込まれます。
しかしながら、配偶者ビザ申請では、100万円の残高証明で足りる人とまったく足りず不許可になる人がいます。
これは入管が公平でない審査をおこなっているからではなく、「残高証明」以外の状況が、申請人ごとにまったく異なっているからなのです。
たとえば月給40万円の定収を確保したけれども就職して間もないため、「収入の継続性」の要件を補強するために「残高証明書」を提出する場合と、完全無職の状態の方が残高証明書を提出する場合とでは、求められる金額が異なることは自明でしょう。預金の意味がまったく異なるからです。
また、収入要件を欠く度合いがどの程度まで許されるかは、婚姻の真実性の条件の立証がどこまで成功しているのかにもよってきます。
婚姻の真実性の立証がそもそも完璧でないのに、収入面でも不安があると、いくら預金残高があろうが不許可になることも多いです。
この記事では、配偶者ビザ申請の「残高証明」がいくらあれば良いのかについて、わかりやすく解説していきます。
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配偶者ビザ申請の必要書類において、残高証明書は必ず提出しなければならない書面ではなく、自主的に任意に提出する書面です。
これが何を意味しているかと言えば、入管は配偶者ビザ申請において、ストックとしての貯金がいくらあるかよりも、フローとしての定期的な収入がいくらあるかを、配偶者ビザの審査に用いているということです。
したがって、配偶者ビザの要件である、収入の継続性、収入の安定性、収入の額をきちんと立証できる方は、残高証明書を提出する必要はありません。
日本有数レベルで配偶者ビザ申請をお手伝いしている東京・六本木のアルファサポート行政書士事務所においても、配偶者ビザ申請において残高証明書を提出する申請者は、全体の5%くらいです。
基本的には日本人配偶者の名義である必要がありますが、日本人配偶者が専業主婦や主夫であるときは、お相手の外国人の方の預金残高証明書でも構いません。
しかしながら、弊社の経験上、外国人の方が預金を預けているのが日本の銀行なら特に問題は生じないと思いますが、外国の銀行に預けている場合には、その外国の銀行から「預金残高証明書」を取得するのはなかなか面倒で、銀行のインターネット上のサイトでログインした画面のキャプチャーを用意しがちであるのでそこだけは気をつけて下さい。
証拠には「証明力」という証明する力があり、預金残高証明書は原本ですから証明力が強い反面、銀行のホームページの画面上の残高をキャプチャーしたものなどは、数字をいくらでも改ざんできてしまうので、証明力が弱いことを認識しましょう。どこまで信じてもらえるのかということです。
また、夫婦が「独立した生計」をたてていけるかが問われていますので、ご両親名義の貯金などは基本的には考慮されません。
だからといって、ご両親名義の貯金を一時的にご自分の口座に移し、あたかもご自身の貯金であるかのように装うことは虚偽申請であり「見せ金」と呼ばれる犯罪なので絶対にしないようにしましょう。
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リクルートブライダル総研(ゼクシィ)がおこなった「新婚生活実態調査2016」によると、新婚夫婦の1ヶ月の生活費の平均額は約19万円でした。全国の直近1年以内に結婚した20から40代の女性を対象にした調査です。
生活費内訳
家賃 約57,000円
食費 約45,000円
水道光熱費 約15,000円
スマホ・ネット代 約15,000円
衣類・日用品 約13,000円
交際費・娯楽費 約45,000円
合計 約190,000円
ただし、東京近郊で家賃57,000円では、ワンルームマンションを借りることすら難しいですので、都市部にお住いの場合は、交際費・娯楽費の大部分を家賃にまわすことになるでしょう。
よく弊社にも100万円の預金残高があれば大丈夫とのネットや知人からの情報をうのみにして、無職の方がご自分で申請をして不許可になりご相談にお見えになるのですが、100万円という預金残高は、新婚夫婦がともに無職である場合には5カ月でゼロ円になってしまう金額です。
もちろん、上記は新婚のご夫婦のみの生活費ですから、すでにお子様がいらっしゃればより多くの生活費が必要なことは言うまでもありません。
配偶者ビザ申請で貯金・預金の額を証明するためには、「預金残高証明書」を提出する方法と「預金通帳の写し」を提出する方法があります。
それぞれメリット・デメリットがあり、残高証明書の場合には、銀行が発行した原本ですので、発行日現在においてその残高がその口座にあったことは完ぺきに証明されます。
しかしながら、預金残高証明書のデメリットは、その残高がどのように形成され、いつから口座にあったのかを証明できない点です。
そのデメリットを突いた犯罪がいわゆる「見せ金」で、ご両親から一時的に借りたお金を自分名義の口座に入れ、残高証明書をとり、その後ご両親に返却する犯罪で、これは虚偽申請ですから、入管から後日「取引履歴証明書」を求められれば犯罪が発覚します。
いっぽう「預金通帳の写し」の場合、その残高の形成過程やいつから口座にあるかは証明できますが、あくまでもコピーであり数字の改ざんが容易なので、証明力という点がウィークポイントとなります。
もし残高の証明が配偶者ビザ申請において死活的に重要な案件の場合には、「預金残高証明書」に加えて「取引履歴証明書」も一緒に提出しましょう。
「取引履歴証明書」とは、銀行が発行する証明書の原本であり、預金通帳のように過去の取引が記載されるので、その残高が見せ金ではなく、まぎれもないご自身のお金であることも証明することができます。
収入に特に問題がない方は「預金残高証明書」を提出する必要がないのですから、この書面を準備する場合とは、収入の継続性の要件、収入の安定性の要件、収入の額の要件のいずれかに不安要素があるときです。
このときに、他にも立証が不十分な要件が残されていると、入管から不許可が出される可能性が極めて大きくなります。
別記事で、収入に不安があるときの立証のポイントを解説していますので、そちらをあわせて確認しましょう。
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入管は、1つだけのマイナス要因は説明を尽くすことにより大目に見てくれることもないわけではありませんが、2つ以上のマイナス要因を同時にかかえていると、問答無用で不許可にすることが多いので注意しましょう。入管の立場になると、マイナス要因をいくつも抱えている人は、不許可の判断を下しやすいということになります。
したがって、配偶者ビザのマイナス要因を自覚している人は、重箱の隅をつつかれても耐えられる書面を作成していく必要がありますから、みんビザがお勧めする行政書士に相談しましょう。
アメリカや欧州の方には移民法弁護士(immigration lawyer)といって、ビザの取得を弁護士に依頼することはごく当たり前の行為として定着しているのですが、アジア諸国などではまだ自力で徒手空拳でビザ申請をやりがちですから、日本人の方がきちんとフォローしてあげましょう。日本ではビザ申請は弁護士ではなく行政書士の仕事となっています。>>こちら
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。
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