配偶者ビザ申請の提出書類「株主総会議事録」について

更新日時:2020年6月21日

行政書士 佐久間毅

■かんたん解説

>>  「株主総会議事録」は、配偶者ビザの申請人が会社の経営者であるが、これまでの役員報酬の額では夫婦の生計が成り立つことを立証できない場合に行なう役員報酬増額の株主総会決議を証明する会社が作成する議事録です。

>>   役員報酬が定款で定められている場合は株主総会の「特別決議」で、役員報酬が定款で定められていない場合は株主総会の「普通決議」で変更することが可能です。取締役会で役員報酬の具体的な額を決めることも会社法上許されています。

>>   役員報酬は一年を通じて変更することが可能ですが、税法上有利なのは、事業年度開始3か月以内の変更です。

■くわしく解説

1.配偶者ビザと株主総会議事録

配偶者ビザの申請人又はその配偶者が会社役員である場合、節税の観点から役員報酬を極限まで低く設定されている方がいらっしゃいます。この場合、その役員報酬の額では配偶者ビザの審査を通過することができないため、配偶者ビザ申請を契機として役員報酬を増額することとなります。

会社の取締役の報酬は、会社法によって、定款または株主総会の決議で決せられます。したがって、まずはご自身の役員報酬の額が定款に記載されているのかいないのかを確認するところから始まります。

なお、株主総会で役員給与の支給限度額を定め、各人別の支給額は取締役会で決議することも会社法上許されていますので、そのような場合は取締役会議事録などを適宜準備します。

 

2.役員報酬変更の決議要件

役員報酬が定款で定められているときは、その変更には株主総会の特別決議が必要です。役員報酬が定款で定められていないときは、株主総会の普通決議で変更することができます。そして、決議要件は、株主総会議事録の冒頭に記載することとなります。

 

3.役員報酬変更と法人税法の「定期同額給与」

時折、役員報酬は事業年度開始から3カ月以内でないとすることができないと勘違いをされているかたがいらっしゃるのですが、役員報酬の変更自体は法律上いつでもすることができます。

 

役員報酬は事業年度開始から3カ月以内におこなうと、税法上有利だというだけです。つまり、事業年度開始から3か月内に株主総会を開いて役員報酬を増額すると、増額後のすべての役員報酬が、定期同額給与として認められ損金計上することができます。役員報酬の増額変更を事業年度開始から3カ月を過ぎて行うと、増額分について損金計上が認められなくなります

 

もちろん、節税を優先させるのであれば、次の事業年度開始のタイミングに役員増額変更をして、その後、配偶者ビザの申請をすればよいのですが、通常は仮に事業年度開始3カ月を過ぎてしまっていたとしても、多少の税金アップは甘受して、配偶者ビザ申請を優先させることとなります。

 

■この記事を書いた人

行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)

東京都出身。慶應義塾志木高等学校慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。


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