2021年2月23日更新
行政書士 佐久間毅
>> 国際結婚をした日本人の苗字(姓)は、原則として旧姓のままですが、変更もできます。
>> 国際結婚をした外国人の苗字(姓)は、外国人の母国の法律で決まりますが、日本では「通称」を設定できます。
国際結婚をした日本人の苗字(姓)は、日本の法律に基づいて、氏が変更したり、しなかったりします。
関係がある日本の法律は、民法と戸籍法です。
日本では、苗字、名字、姓などとも呼ばれますが、法律上の呼称は「氏(うじ)」といいます。
以下ではわかりやすく苗字、名字、姓といった言葉を用いますが、すべて法律上の「氏」を指していますのでご注意ください。
日本の民法は、夫婦は同一の姓を名乗ることとしていますので、日本人同士の結婚の場合は、結婚の際に、夫婦どちらの姓を名乗るのかを選択することができますし、しなければなりません。
日本人同士の結婚の場合は、結婚後も「夫婦別姓」ということは法律上できませんので、結婚届において、今後どちらの姓を名乗るのか報告することになっています。日本人同士の結婚の場合は、日本人夫と日本人妻が結婚前からそれぞれ戸籍をもっており(通常は、親の戸籍に「子」として入っています。)、結婚を契機として新しい夫婦の戸籍を作成するにあたり、どちらの戸籍上の姓を引き継ぐのか選択する必要があるからです。
【ご参考】
〇民法750条(夫婦の氏)
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する。
しかしながら、この民法750条は、国際結婚の場合には適用されないこととされていますので、国際結婚をした日本人と外国人は「夫婦別姓」が原則となります。
なぜ民法750条が国際結婚の場合に適用されないのかというと、日本人には戸籍がありますが、外国人は日本の戸籍がありませんので、どちらの戸籍上の姓を引き継ぐのかという選択の余地がないからです。
したがって、日本人の戸籍上の姓が自動的に、あたらしく作成される戸籍においても引き続いて採用され、日本人であるあなたは、旧姓をそのまま名乗るのが原則です。
東京のアルファサポート行政書士事務所の国際結婚をされたお客様も、多くの方が結婚後も夫婦別姓のままです。
国際結婚された日本人のかたが自分でお相手の配偶者ビザを申請され、不許可になってみんビザ™にもちこまれることが多いケースが、
交際期間が短い、収入面(継続性・安定性・額)に問題があるケースです。
問題となりそうな人はご結婚前にきちんと解決しましょう。
配偶者ビザの条件の中には、国際結婚の完了後にはどうにもできない問題がいくつかあります(例えば交際期間など。)。
まだご結婚前であれば、交際期間などについて再考できるはずですので、関連記事「配偶者ビザの条件」などをよくご確認ください。
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上述のように、日本人と結婚した日本人の姓は変わらないのが原則なのですが、婚姻成立後6か月以内であれば、
市区町村役場に届け出るだけで、日本人の姓を、結婚した外国人の姓に変更することができます。
婚姻届と同時にこの「外国人との婚姻による氏の変更届」を提出すれば、結婚と同時に、お相手の外国人の姓を名乗ることができます。
(ご参考)
戸籍法107条2項
外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、
家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
この変更届を提出すると、例えば、下記のように日本人の姓をお相手の外国人の姓に変えることができます。
これは日本人の戸籍上の本名が「ディアズ」に変わるということなので、日本人のパスポートの名前も「ディアズ」に変わります。
将来、ご夫婦の間にお子様が生まれたときには、当然、お子様の姓も「ディアズ」になりますから、この変更届を提出するかどうかは、
そこまでよく考えたうえで提出しましょう。
【結婚前の氏名】
・日本人妻:木村 陽子
【届出後の氏名】
・日本人妻:ディアズ 陽子(戸籍上の名前)
・日本人妻:DIAZ YOKO (パスポートの表記)
【将来生まれるお子様の氏名】
・日本人子:ディアズ 賢 (戸籍上の名前)
・日本人子:DIAZ KEN (パスポートの表記)
【届に必要なもの】
・外国人との婚姻による氏の変更届
・届出人の印鑑
・戸籍謄本1部 ※本籍が届の提出先と異なる市区町村にある場合
結婚を契機として外国人配偶者の氏を名乗っていた日本人は、万が一その外国人と離婚した時に、その氏はどうなるのでしょうか?
上述の「木村 陽子」さんが、結婚に伴い「ディアズ 陽子」を名乗り、その後に離婚した場合でも、自動的には「木村 陽子」には戻ることはなく、原則として氏名は「ディアズ 陽子」のままです。
しかしながら、離婚後も元の配偶者の氏を名乗り続けることは適切でない場合もありますから、その場合は、離婚から3か月以内に市区町村役場に届け出ることにより、元の氏に戻すことができます。
結婚に伴い氏の変更をするときは結婚後「6か月以内」であったのに対し、離婚に伴い氏の変更をするときには離婚後「3カ月以内」に届出をしなければなりません。結婚と離婚とで届出の期限が異なりますので気をつけましょう。
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外国人であるお相手は、日本の法律に基づいて「本名」を変更することはできません。
外国人の本名を変更したいのであれば、母国の法律に基づいて、母国や在日大使館において、氏の変更をします。
このように、外国人のお相手は、日本の法律に基づいて「本名」を変更することはできませんが、本名はそのままに、日本での「通称」を設定することもできます。
外国人妻が、国際結婚後に日本人夫の姓を名乗り、本名を変更することは珍しくありません。
本名が変更されると、その結果として、本国発行のパスポートのお名前も変更されることになります。
外国人が自分の「本名」を変更するのですから、日本法ではなく、本国法(自分の母国の法律)により変更します。
したがって、結婚に伴う本名変更の手続きは、外国人の本国の役所か、日本にある外国の大使館において行われ、日本の市区町村役場では手続きできません。
外国人が母国の本名を本国法により変更したときには、変更後の氏名を、戸籍謄本に記載できます。
【結婚当初の戸籍謄本に記載された外国人配偶者の氏名】
外国人妻の氏名:ビディンガー,ニコル
【外国人の氏の変更の記載申し出後の外国人配偶者の氏名】
外国人妻の氏名:田中,ニコル
あなたは在日韓国人の一部のかたが、日本式の名前(通称)を用いて生活されていらっしゃることをご存知かと思います。
たとえば在日韓国人の方で、パスポート上のお名前は「キム ヨンサム」であっても、日本では通称である「山本 太郎」を名乗ることができます。
これが通称なのですが、なにも在日韓国人のかたに限らず、すべての国籍の外国人が、この通称を設定することができます。
本名(パスポートに表記されたお名前)とは別に、日常的に使用している日本式の名前を通称として登録することができるのです。
たとえば、パスポートに記載されたお名前が「BIDINGER,NICHOLE」であるアメリカ人女性が、日本人男性の田中さんとご結婚された場合、通名として「田中 ニコル」を登録することができます。
登録された通称は、住民票に記載されますが、在留カードには記載されません。在留カードに記載されるお名前はあくまでも、パスポートに記載された本名です。
【ご参考】
〇住民基本台帳法施行令 第30条の16(外国人住民の通称の住民票への記載等)
外国人住民は、住民票に通称(氏名以外の呼称であつて、国内における社会生活上通用していることその他の事由により居住関係の公証のために住民票に記載をすることが必要であると認められるものをいう。以下この条及び次条第一項において同じ。)の記載を求めようとするときは、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の市町村長(以下この条及び同項において「住所地市町村長」という。)に、通称として記載を求める呼称その他総務省令で定める事項を記載した申出書を提出するとともに、当該呼称が居住関係の公証のために住民票に記載がされることが必要であることを証するに足りる資料を提示しなければならない。
通称を登録する場合には、その通称が日常の社会生活において用いられていることを証明しなければなりません。
その確認書類として認められるのは、例えば次のような書面です。
・勤務先が発行した通称の記載された健康保険証、在職証明書など
・通称の記載された預金通帳等
したがって、通称登録は、思いのほかハードルが高いです。これは、過去に通称が様々な犯罪に利用されてきたためで、ある程度は仕方ありません。たとえば通称の設定や変更を安易に認めると、いくつもの通称名で銀行口座をつくり、マネーロンダリングに利用されたり、振り込め詐欺に使われる多数の携帯電話の加入に使われたりするためです。
上述のように、通名の登録は、社会的に通名を使用したあとでないと登録することができず、けっこう登録のハードルが高いのですが、
結婚をして日本人の氏を通称として登録する場合には、例外的に過去の通称使用の実績がなくても、通称登録をしてくれるでしょう。
その根拠は、下記に提示する総務省自治行政局の通達です。
通称の届出の取扱要領は各地方自治体ごとに定められていますので、まずは市区町村役場で相談してみましょう。
〇平成24年10月29日 総務省自治行政局 事務連絡
(問4)通称の記載を求める申出について、親や身分行為の相手方の氏と本名と異なる名 を組み合わせた呼称の申出を行う場合、当該本名と異なる名の部分について、国内 における社会生活上通用していることの確認が必要となるか。
(答)親や身分行為の相手方の氏(親や身分行為の相手方が外国人住民である場合の通称 の氏を含む )を使用した通称をはじめて申し出る場合においては、当該氏の確認を行ったのであれば、名に当たる部分については、別途国内における社会生活上通用 していることの確認を行う必要はない。
国際結婚は両国で成立させる必要があります。いっぽうの国でのみしか結婚が成立していない状況は、他方の国ではまだ「赤の他人」で法的に中途半端な状態ですから、配偶者ビザは通常もらえません。国際結婚と違って配偶者ビザは様々な理由で不許可になりますので重箱の隅をつつかれても耐えられる書面を作成していく必要があります。
アメリカや欧州の方には移民法弁護士(immigration lawyer)といって、ビザの取得を弁護士に依頼することはごく当たり前の行為として定着しているのですが、アジア諸国などではまだ自力で徒手空拳でビザ申請をやりがちですから、日本人の方がきちんとフォローしてあげましょう。日本ではビザ申請は弁護士ではなく行政書士の仕事となっています。>>こちら
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。
>> 配偶者ビザが不許可になる確率の高い15のケース [クリック!]
配偶者ビザへの変更、海外から呼び寄せる場合の両方に共通の、配偶者ビザが不許可になる確率が高い典型的な15のケースについて解説しています。
国際結婚が完了したら次に日本の配偶者ビザの検討を始めるかたもいらっしゃいますが、外国人の本国でしか取得することができない書類は、事前になるべくまとめて集めると手間が省けます。この記事では、お相手の外国人が日本に住むときに必要となる配偶者ビザの申請に必要な書類を解説しています!
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