更新:2020年8月31日
行政書士 佐久間毅
厚生労働省の人口動態統計によれば、2019年(令和元年)の1年間における日本の離婚件数は21万組でした。
この年の結婚件数は58万3000組ですので、いかにその件数が多いかお分かりいただけると思います。
残念ながら在留資格「日本人の配偶者等」で日本に在住している外国人の方が日本人と離婚をすることになったら、どうすればよいのでしょうか?
この記事では、配偶者ビザで日本に滞在している外国人が離婚をされたときにしなければならないことをまとめてみました。
配偶者ビザ(在留資格「日本人の配偶者等」)で日本に滞在されているかたが日本人と離婚した時は、その日から14日以内に出入国在留管理局に届出をしなければなりません。やり方は、次の項目で解説しています。
これは入管法上の義務(入管法19条の16第3号)ですので、14日以内に届出をしなければ違法行為であり、記録が残ります。
14日以内に入管に知らせなかったという違法行為は、今後もし引き続き日本に在留しようされている場合は、在留資格の変更や更新の申請をする際に審査上のマイナス(消極要素)になります。「素行の善良性」を満たせなくなるおそれがあります。
それだけでなく、入管法に罰則も用意されています(入管法71条の3第3号)ので、かならず届け出るようにしましょう。
離婚したことを届け出ると、その時から入管に事情を把握されてしまうので、その事実を届け出ないでそのまま放置してしまう人もいらっしゃるようです。
しかしこのことにより違法行為を行なうことになるので問題を最悪な方法で先送りしているにすぎません。
できれば自分に不利な事実を届け出たくないというお気持ちはよくわかりますが、最終的にそのことが自分の首をしめることになります。
今後も日本に住み続けることを希望する場合は、入管法で定められた義務に違反することは決して得にはなりませんので、かならず14日以内に出入国在留管理局に離婚したことを届け出ましょう。
2020年7月現在の情報は次のとおりです。かならず出入国在留管理局で最新の情報を確認してから行動しましょう。
届出期間 離婚日から14日以内
必要書類 ・届出書
・(窓口)在留カードの提示
・(郵送)在留カードの写し
※離婚を証明する書面の提出は必要ありません。
届出先 3つの方法のいずれかの方法で届け出ます。インターネットか郵送が便利ではないでしょうか。
・(インターネット)電子届出システム
・(窓口)最寄りの地方出入国在留管理官署へ問い合わせのこと。
・(郵送)在留カードの写しを同封の上、下記宛てに送付します。封筒の表面に朱書きで「届出書在中」と記載します。
<郵送先>〒160-0004 東京都新宿区四谷一丁目6番1号四谷タワー14階
東京出入国在留管理局在留管理情報部門届出受付担当
日本人の配偶者の在留資格のお持ちの方は、「日本人の配偶者としての活動」を行なうために在留資格「日本人の配偶者等」が与えられています。
しかしながら離婚をされるともはやこの活動を行なうことが不可能になるので、「在留資格該当性」を失います。
そこで入管法はこのような本来予定される活動ができなくなった外国人の方の在留資格を取り消す制度を設けています。
入管法は、日本人の配偶者等又は永住者の配偶者等の在留資格をもって在留する者で配偶者の身分を有する者が、配偶者の身分を有するものとしての活動を継続して6か月以上行わないで在留していること、を在留資格取消事由としています(入管法22条の4第7号)。
離婚後、帰国をしないで日本で引きつづき生活することを希望する場合は、この6か月をタイムリミットの目安とし、それまでになるべく早く次のアクションを起こす必要があります。
在留資格取消制度は、6か月が経過したらある日突然在留資格を失うものではなく、取消の前に入国審査官が対面での意見聴取を行ないます。
そして在留資格の取り消しをしようとする場合、法務大臣は、在留資格変更申請の機会を与えるよう配慮をすることとなっています(入管法22条の5)。
つまり、離婚した外国人が別の在留資格を取得してひきつづき日本に在留することを希望しているのであれば、それに対する「配慮」を期待できます。
ただし、変更先の在留資格の候補には出国準備のための在留資格「特定活動」も含まれますので、「配慮」への過度な期待は禁物です。
変更先の在留資格としては、理論上は他のあらゆる在留資格が検討対象になるわけですが、筆者がお手伝いするケースとしては下記のものが多いです。
日本人と結婚される前に、就労ビザで働いていた外国人は実際に多いです。このような場合は、自分がもともと持っていた就労ビザに戻るという選択肢があります。
結婚後も就労ビザを取得した元の会社を辞めることなく引き続き仕事をされていたのであれば、就労ビザへの復帰は可能性の高い選択肢となるでしょう。
在留資格としては「技術・人文知識・国際業務」、「技能」、「経営管理」などになります。
一方、これまでに日本で就労ビザを取得した経験がないケースや、就労ビザを取得した経験はあるがもうその会社を退職してしまっている場合には、ゼロからの挑戦となりますので、より慎重さが求められます。
就労ビザの取得は学歴や実務経験などが要件として課されますので、取得が難しい方も実際に多くいらっしゃいます。
この場合で、学費を支払うことができる経済状況にあれば、大学などに入学し、在留資格「留学」へ変更する選択肢もあります。
留学にはかならず卒業の時期がやってくるので問題の先送りにならないよう、本当に必要な進路なのかを考えましょう。
もし大学を卒業することができれば、その後就労ビザへ変更し、引き続き日本に在留する道も開けてきます。
離婚した外国人が日系人であれば在留資格「定住者」を取得して、告示定住者となることも考えられます。
しかしここではいわゆる「離婚定住」と呼ばれる、日本人と離婚した外国人に与えられる可能性のある在留資格「定住者」について解説します。
まず一番大切なことは、この「離婚定住」は非告示定住または告示外定住といって、国が正面から認めた定住者の類型ではないということです。
定住者には「定住者告示」という告示があって、そこに国が定住者として認める類型が列挙されているのですが、離婚定住はその中に含まれていません。
つまり、離婚定住は国は正面からは認めていないけれど「認められることもある」という非常に申請が困難な定住者の類型であるということを強く認識してください。
したがって上述した就労ビザなど他に端的にあてはまる在留資格があるのであれば、そちらへの変更を最初に検討するのがセオリーです。
離婚定住は国が正面から認めていない存在という意味で危険度が高く、かならずみんビザ™がお勧めする行政書士に相談しましょう。
離婚定住が認められる可能性がある条件のうち主要なものは次のとおりです。
①日本において、正常な結婚生活が3年以上継続していたこと
②生計を維持することができる収入があること
③日常生活に不自由しない程度の日本語力があること
なお、日本人と離婚をした外国人の方で、その日本人との間に子(日本人の実子)がいる場合には、上記の要件は緩和されます。
当該外国人のためというよりも、定住者ビザを認めることがその子の利益となるためです。
また、日本人の実子を養育する立場なので、たとえ3年以上の結婚生活を送っていなくとも、日本との結びつきが強い存在といいうるからです。
まず①は求められず、結婚後1年でも定住者ビザが認められる可能性があります。
③も求められず、日本語能力がなくても定住者ビザが認められる可能性があります。
子が日本国籍を有している必要はありませんが、1)出生時点において父または母が日本国籍である必要があり、また2)子の親権を有し、3)現に監護・養育している必要があります。
日本人Aさんと離婚した外国人Xさんが、別の日本人Bさんと結婚をした場合、在留資格の変更は必要ありません。
しかしながら、次に配偶者ビザの更新時期がきた暁にはいわゆる「パートナーチェンジ案件」となり困難を極めるケースが多く、ご自身で申請をする場合は多くが不許可になります。
その理由は、多くのケースにおいて、Bさんとの交際が、Aさんとの結婚を根拠に取得した配偶者ビザでの日本滞在中に行なわれていることに起因します。Aさんとの結婚生活を送るためのビザで、別のBさんと交際していたら、さすがに問題ですよね?
Bさんとの交際が始まっていたのであればAさんとの婚姻は事実上破綻していたのであり、そうするとその時点ですでに在留資格該当性を失っていたと考えられます。
ましてや、すでにBさんとの交際が始まっていたにもかかわらず、その後Aさんとの結婚を根拠に何食わぬ顔で配偶者ビザを更新した事実があれば、虚偽申請(=犯罪)の疑いすらでてきてしまいます。
さらに、Aさんとの婚姻中に交際をしていたのであれば民事上の不貞行為となる可能性もあり、現に筆者のクライアントのなかには、裁判により元妻・元夫から損害賠償請求を受けたようなかたもいらっしゃいます(なお民事上の損害賠償案件は行政書士ではなく弁護士の仕事です。)。
このように、離婚後に別の日本人とご結婚された場合の案件は、解決しなければならない問題が山積みで配偶者ビザの更新のなかでも最も許可されづらい類型のひとつですので、かならずみんビザ™がお勧めする行政書士にご相談・依頼しましょう。
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行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。