更新:2020年10月16日
行政書士 佐久間毅
>> 留学生は、資格外活動許可の範囲内でアルバイトをすることが可能です。
>> 毎年、週28時間を超えてアルバイトをしている留学生のビザ更新やビザ変更が不許可になる事例が多くみられます。
日本でアルバイトをしてくれる留学生は、人手不足の業界にとって救世主のような存在です。
また、日本でアルバイトをする留学生の多くは、母国への仕送りなどをする心の優しい青年であることが多いものです。
このため法定時間を超過してアルバイトしている留学生をみかけても、周囲の日本人も寛容であることが多いです。
しかしながら、週28時間の法定時間を超過してアルバイトをしてしまうと「資格外活動罪」という犯罪であるため、
ビザ更新やビザ変更が許可されるために必要な「素行の善良性」を満たせなくなり、申請が不許可となって母国へ帰国するケースが後を絶ちません。
留学生はみんな、アルバイトに週28時間の制限があることを知っています。しかしながら、「みんなやっているから、大丈夫」と甘く見て、週28時間を超えてはたらいている人が大勢いらっしゃるのが現状です。
この記事では、なぜ週28時間なのかという点にフォーカスすることにより、資格外活動の深刻さを理解していただければと思います。
【もくじ】
1 資格外活動許可について
2 偽装滞在の一類型として偽装留学
3「常勤雇用」の一歩手前が週28時間勤務
4 留学ビザの更新が不許可になる留学生
5 配偶者ビザへの変更が不許可になる留学生
6 資格外活動「罪」とあえて犯罪であることを強調する理由
▼記事は下につづきます▼
【2020年】
留学ビザから配偶者ビザへの変更が許可されたアルファサポートの中国人のお客様の在留カード。
卒業したての頃は収入面で配偶者ビザの要件をクリアしていることの立証が困難ですが、適切にカバーすることで見事許可を勝ち取りました!
留学生は留学ビザ(正式名称、在留資格「留学」)が許可されて日本に滞在していますが、留学ビザは本来、就労することが一切認められていません。留学生がお持ちの在留カードの表面には、全員「就労不可」と書いてあるはずです。
留学生が日本ですることができるのは、「日本国内の教育機関において教育を受ける活動」のみです。
しかしながら、日本人の大学生や専門学校生だって普通にアルバイトをしているのですから、留学生だから勉強だけしていろというのはおかしいですし、何より一切アルバイトできなければ学費はともかく、日々の生活に困ってしまう学生さんも多いですから、
資格外活動許可という特別の許可を受ければ、留学生も週28時間までであれば(長期休暇中は別の規定あり。)働くことができます。
資格外活動許可をまったく受けていなければ一切アルバイトをしてはいけませんが、この資格外活動許可を受けていない方はまずいらっしゃいません。
次項でご説明するように、週28時間という留学生のアルバイト制限時間は、出入国在留管理局が嫌がらせで恣意的に決めているものではありません。
日本人であっても、週32時間以上はたらくと、常勤雇用者として扱われるのが通常です。
週28時間を週にほんの4時間オーバーしただけであっても、外国人だけでなく日本人も、やはり常勤雇用者として扱われるのです。
常勤雇用者として扱われるとなにがマズイかといえば、それはもう留学生としての活動ではなく、留学ビザを隠れみのにして就労する「偽装留学」をしている偽装滞在者のカテゴリーに入ってしまうからです。
実は、日本の法律には、なにをもって「常勤雇用」と呼ぶかの定義はないのですが、一例として、厚生労働省がさだめている常勤医師と非常勤医師の定義をみてみましょう。
大きめの病院にいくと、常勤医師と非常勤医師が、交互にシフトを組んでいることにお気づきになると思いますが、あの「常勤医師」には定義があります。
厚生労働省は日本人の常勤医師の定義を、その病院で週に32時間以上働く医師と定義しています。これを32時間ルールといいます。
ひるがえって考えてみると、留学生が週にはたらくことができる週28時間の時間制限というのは、常勤雇用者の一歩手前の労働時間であることがわかります。
週32時間はたらくと日本人でも常勤なのですから、留学生に認められるアルバイト時間は、やっぱり30時間は超えられないですよね?
したがって、この週28時間という制限は、理論的にみても留学生に認められるギリギリの労働時間であり、これを超えて働いている人は「常勤医師」並みの労働をしてしまっていることになります。
留学生のアルバイト制限時間である週28時間という数字は、入管法という法律に明記されており、それに違反すれば「資格外活動罪」という犯罪になります。
留学ビザに限らず、在留資格(在留期限)を更新するためには「素行の善良性」とよばれる狭義の相当性が必要なのですが、犯罪を行った人を「素行が善良である」とはなかなか言えるものではありません。
したがって、毎年多くの留学生が、留学ビザの更新が不許可になって母国に帰国することになります。
留学ビザの更新が不許可になるだけでなく、配偶者ビザへの変更が不許可になる留学生も多いです。なぜなら、「素行の善良性」は、在留資格(在留期限)の更新だけでなく、在留資格の変更申請時にも必要であるからです。
入管がいうところのいわゆる「在留不良者」は、在留資格(在留期限)が更新できないだけでなく、変更をすることもできません。
特に常勤雇用者と同レベルの勤務をしてしまうといわゆる偽装滞在の一類型である「偽装留学」の疑いが強くなりますので、
日本人とご結婚されて配偶者ビザを申請してももう一つの偽装滞在である「偽装結婚」が強く疑われてしまうことになります。
いわゆる偽装滞在には、偽装婚、偽装難民、偽装就労のほかに、偽装留学という類型があることに、注意が必要です。
偽装留学の疑いある人物が配偶者ビザを申請しても、偽装婚をつよく疑われることは自明でしょう。
筆者は留学生や留学生とかかわりのある日本人の方から資格外活動について尋ねられたときには、あえてその違反について「資格外活動罪」と正式名称で呼ぶことにしています。
オーバーステイというと何となく罪の重さを感じさせませんが、正式名称である「不法残留罪」といえばかなり重い響きがあるのと同じと思うからです。
これは、犯罪であることを明確にすることで、留学生が安易に時間超過のアルバイトをしてしまい、将来、ビザ更新やビザ変更が不許可になって深く後悔することを何とか予防したいと願うからです。
留学生の周りにいらっしゃる皆さまも是非、留学生のアルバイトの時間制限がなぜ週28時間に設定されているのかをご理解いただき、留学生が悲しい思いをしないよう導いてあげましょう。
もし週に28時間以上アルバイトをしている留学生とのご結婚をお考えの方は、けっして甘くみることなく東京・六本木のアルファサポート行政書士事務所までご相談ください。>>こちら
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行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。