更新:2020年7月1日
行政書士 佐久間毅
>> 在留資格とは、入管法で定められた外国人が日本に滞在するために必要な法的資格のことです。
>> 在留資格は2020年7月現在、29種類あり、在留期間という有効期限がもうけられます。
>> 1滞在につき2つ以上の在留資格を同時に保有することはできません(一滞在一在留資格の原則)。
在留資格とは、入管法でさだめられている外国人が日本に滞在するために必要とされる法的資格のことをいい、原則としてすべての外国人が在留資格を有して日本に滞在しています。
ごく一部の例外として、入管特例法上の特別永住者などの外国人がいます(以下の説明ではこれらの例外については捨象します。)。
上述の在留資格の定義より、在留資格を有しないで日本に滞在すると「不法滞在(ふほうたいざい)」となります。
在留資格は2020年7月現在で29種類あり、各在留資格ごとに日本で行なうことができる活動がさだめられています。ここで定められた活動は、日本が国家として外国人に許容する活動を示したものであり、逆にここに列挙されていない活動をおこなうために日本に滞在することはできません。
その意味おいて、入管法は外国人が日本で行なうことができる活動を在留資格のかたちで「限定列挙」しているものということができます。
在留カードとは、法務大臣が中長期的に日本に在留を希望する外国人に対し上陸許可または在留許可を与えるさいに交付するカード型の身分証明書のことをいいます。
在留カードには、氏名・生年月日・性別・国籍・住居地などの身分事項のほか、顔写真、許可された在留資格、在留期限、就労活動の可否などが記載されています。
正規の在留資格をもって在留する外国人のうち次の①から④に該当しないかたは「中長期在留者」と定義され、その在留資格を証明する身分証として「在留カード」が交付されます。
①3か月以下の在留期間が決定された者
②短期滞在の在留資格が決定された者
③外交又は雇用の在留資格が決定された者
④①から③に準ずるものとして法務省令で定めるもの
短期滞在者などにはたとえ正規の在留資格を有していても在留カードは交付されません。これらの者の在留資格は上陸時に旅券に貼付されるシール状の証印により確認されます。
就労系の在留資格を就労ビザと呼んだり、在留資格「日本人の配偶者等」を配偶者ビザと呼んだりして、査証(ビザ)と在留資格は日常生活においてしばしば混同して用いられています。
しかしながら法的にはまったく別ものですので、生活者としてではなく仕事として出入国管理制度にかかわるかたは両者を明確に区別する必要があります。
わかりやすくいえば、上陸審査のときに「点」で必要となるのが査証であり、上陸したあとに「線」で必要となるのが在留資格です。
査証とは、来日を希望する外国人が海外にある日本大使館や日本領事館に対し申請をし、これをうけて現地の領事官等が発給するもので、外国人が所持する旅券が適法に発行された有効なものであることを確認するとともに、
外国人の入国と在留が査証に記載された条件のもとに適当であることの確認をし、日本への入国を推薦するものです。
つまり査証は外国人が日本に上陸する際の上陸審査のときに必要となる旅券の有効性についての確認証であり入国についての推薦状ですが、これ自体が何らかの法的な資格や地位を意味するものではありません。
したがって旅券に査証を受けて来日しても、上陸審査にひっかかれば日本に上陸することはできません。最終的に入国させるか否かは空港・海港にいる入国審査官が決定するからです。
査証は上陸審査のための下準備(旅券が有効であることの確認と入国が適当であることにもとづく推薦)ですから、上陸が許可されれば用済みになります。
そして上陸許可以降の日本における滞在は、上陸許可によって与えられた法的資格である在留資格によることとなります。来日前に取得した査証を根拠に滞在しているわけではないことに注意しましょう。
なお査証免除といって、観光など営利活動を行わない一時滞在者や一時的な商用入国者に限定したうえで、人的交流の促進のため特定国の国籍の方には査証が免除される制度があります。
日本に滞在中は、いずれかひとつの在留資格が認められることになり、同時に2つ以上の在留資格が認められることはありません。
このため実務においては、例えば在留資格「興行」が認める演奏活動と在留資格「芸術」が認めるレッスン活動の両方を行ないたい場合などに不都合が生じる場合があります。
現に有する在留資格では認められない活動を行なえば資格外活動罪となるため、事前に資格外活動許可をえてこれを回避します。
在留資格該当性とは、外国人が日本において行おうとする活動が、入管法の別表一に定められた活動に該当することまたは別表二にさだめられた身分または地位にもとづく活動に該当することをいいます。
在留資格該当性をみたすことは、日本における滞在が認められるために最低限必要なものであり、在留資格該当性がなければ、日本への新規上陸が許可されることもなければ、在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請が許可されることもありません。
しかしながら在留資格該当性のみを立証すれば在留資格が許可されるというわけではありません。新規上陸には在留資格該当性以外にも上陸拒否事由に該当しないことが、在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請においては「狭義の相当性」を満たすことなどが求められるためです。
在留資格該当性は日本における滞在が認められるための必要条件であって十分条件ではないということができます。
在留資格認定証明書とは、来日しようとする外国人が上陸のための条件(在留資格該当性・基準適合性)を満たしているかどうかについて法務大臣があらかじめ審査し、この条件を満たしていると認定したときにその旨を証明するために交付する書面のことをいいます。
在留資格認定証明書は来日を希望する海外にいる外国人が査証の迅速な発給を受けるために導入された制度であるため、すでに日本に滞在している外国人が在留資格を変更をする申請をするさいには必要とされません。
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入管法で定められた29種の在留資格は、別表においてまず大きく2つにカテゴライズされています。1つは別表一に掲げられた「日本において一定の活動を行うものとして在留を認める者」であり、もうひとつは別表二に掲げられた一定の身分又は地位を有するものとして在留を認める者です。
別表一はさらに、お金を稼ぐことができるかそうでないか(入管法の表現では「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」であるか否か。)、基準省令が適用されるかされないか等の観点からさらに5つに区分されています。
したがって入管法はその別表において29の在留資格を最終的に6つにカテゴライズしています。29種類の在留資格については、出入国在留管理局が作成した在留資格一覧表をご確認ください。
■在留資格の分類Ⅰ:就労活動が可能で、基準省令が存在しない在留資格(別表第一・一の表)
在留資格:外交、公用、教授、芸術、宗教、報道
■在留資格の分類Ⅱ:就労活動が可能で、基準省令が存在する在留資格(別表第一・二の表 13種)
在留資格:高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転筋、介護、興行、
技能、特定技能、技能実習
■在留資格の分類Ⅲ:就労活動ができず、基準省令が存在しない在留資格(別表第一・三の表 2種)
在留資格:文化活動、短期滞在
■在留資格の分類Ⅳ:就労活動ができず、基準省令が存在する在留資格(別表第一・四の表 3種)
在留資格:留学、研修、家族滞在
■在留資格の分類Ⅴ:法務大臣が個々の外国人について特に活動を指定する在留資格(別表第一・五の表 1種)
在留資格:特定活動
■在留資格の分類Ⅵ:一定の身分または地位にもとづく在留資格(別表第二 4種)
在留資格:永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
在留期間とは、外国人が在留資格をもって日本に在留することができる期間をいい、外交、公用、永住者の在留資格以外の在留資格においては5年を超えることができないものとされています(入管法第2条の2第3項)。
有効な在留資格をもって在留していた外国人が、在留期間の更新や在留資格の変更をすることなく、在留期間を徒過してもなお日本に滞在をつづけている場合は、在留期限の翌日より「不法残留(ふほうざんりゅう)」となります。
在留期限は中長期在留者の場合は在留カードで確認することができ、短期滞在者の場合は上陸許可時に旅券に貼付されたシール状の証印で確認することができます。
在留資格は偽りその他不正の手段によって取得された場合や、取得の当時は要件を満たしていたがその後入管法でさだめられた活動をしなくなった場合などに取消が可能となります。
行政書士 佐久間毅(さくま・たけし)
東京都出身。慶應義塾志木高等学校、慶應義塾大学法学部卒。高校在学中に米国コロラド州のイートンでホームステイ。大学在学中は、他大学である上智大学の国際法の権威、故・山本草二教授の授業に通い詰める。大学卒業後は民間の金融機関で8年間を過ごし、現在は東京・六本木でビザ専門のアルファサポート・行政書士事務所を開業。専門は入管法、国籍法。